タグ: 倒産する出版社に就職する方法
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電話の作法
倒産する出版社に就職する方法・連載第18回
2000年5月当時、三五館は編集部2名、総務部2名、営業部1名、そしてH社長という6名体制でした。ここに私が加わることになります。
このくらいの少人数でやっていますから、肩書きは編集部所属とはいえ、業務は雑務全般です。
まずは電話受けがその第一歩です。
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編集者 今日から俺も 編集者
倒産する出版社に就職する方法・連載第17回
(第13回からの続き)
かくして私は、2000年のゴールデンウイーク明けから、アルバイトとして三五館編集部に加わることとなりました。
言い渡された採用条件は、「社会保険なし、残業手当なし、月20万円」だったと記憶しています。
えっ、そんなにくれるのかよ?
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ジョコビッチ完全復活の朝に
倒産する出版社に就職する方法・連載第16回
「はい、もちろん大丈夫です。ぜひお使いください」
私は浮き足立ちました。
担当者の話によると、母国セルビアを代表してリオオリンピックに出場するジョコビッチに取材時間をとることができ、テレビ朝日のオリンピックレポーターとして派遣される松岡修造が直接インタビューすることになった。いろいろな話題をふる中のひとつとして、本人の著作が日本でベストセラーになっていることも質問してみたい、ついては書籍を使わせてくれないか、ということです。
しかもその模様は同局のオリンピック特番として、ゴールデンタイムに放送されるというではありませんか。
異存のあるはずもありません。
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ジョコビッチと生まれ変わった男
倒産する出版社に就職する方法・連載第15回
「ああ、はいはい、ジョコビッチですね」
スポーツ選手だということはわかっていたものの、そのジョコビッチとやらの競技がなんだったかは少々手探り状態でした。
テニスだったっけか、たしか……その程度の認識で、編集部に突如電話してきて、そのジョコビッチとやらの著作『SERVE TO WIN』について早口で捲くし立てる男と実際に会ってみることにしたのです。2015年1月上旬のことです。
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SNS戦略コンサルティング
倒産する出版社に就職する方法・連載第14回
たしかに迷走している。
それは認める。認めざるをえない。
私の人生が……ではない。
三五館シンシャの刊行ラインナップが……でももちろんない。
(私の人生も、三五館シンシャの刊行ラインナップも、計画どおり極めて順調に磐石の構えで進んでいる。冷や汗)
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なぜ出版をやるんですか?
倒産する出版社に就職する方法・連載第13回
2000年4月20日(木)、予定の17時をずいぶん過ぎて始まったH社長との2回目の面接。すぐに採用か不採用かを知らされることになると思っていましたが、どういうわけか話題はなかなか核心に至らず、周辺をぐるぐる回るだけの雑談が続きます。
しばらくのちに気づくことになるわけですが、これはH社長独特の会話術(?)で、打ち合わせのメインテーマをすぐに持ち出さず、しばらく雑談に努めるんですね。あえて獲物の周りをぐるぐると廻りながらじょじょに距離を詰めていくということなのでしょうか。でもそれが意外に長かったりします。
非常にまずいのが、この会話術に相手が応じてしまった場合で、雑談だけが延々と続くことになります。私が知る限りでも、某著者との打ち合わせで「雑談8時間」という日本記録を樹立したこともあるくらいです。
とにかく採用か不採用かを知りたい私の切迫感を感じ取ったのか、H社長もいつもならたぶんまだ20分は続けるであろう雑談を早々に切り上げ、核心をついてきました。
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折りと祈り
倒産する出版社に就職する方法・第12回
およそ1週間後、電話で再訪日を指示された私は、ふたたび四谷を訪れます。
(あっ、前の第11回から読んだ方、つながりありませんので。連載第10回から今回につながります。2000年の話です。なんで私が過去と現在を頻繁に行き来できる能力を手に入れたかについては連載第3回と第7回あたりを参照)
この時点で私は自分の処遇がどうなるのかを知らされていません。
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SNS戦略をめぐる対立、および今後の方針について
倒産する出版社に就職する方法・第11回
「さ、さ、30!? そんなバカな……なんで?」
私は思わず声を荒げました。
SNSメディア情報局局長兼CEO、そしてCFO、COOも顔をそろえ、三五館シンシャの首脳陣が一堂に会し行なわれた経営会議中の出来事です。
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やっと会えたね――運命の面接篇
倒産する出版社に就職する方法・第10回
丸2年にわたり、外から覗き込めないかと背伸びしたり、どこか開いてる窓ないか探してみたり、ドアノブガチャガチャやったり、しまいにゃ扉に体当たりしながら大声出したり……それでもなかなか踏み入ることのできなかった出版業界のとば口まで来たのです。
もうあと一歩で出版業界に足を踏み入れることができそう…。
いや、今までもここまでは何度か来た。
「行けるかも」と淡い期待を抱いたこともあった。
しかし、最後のそり立つ壁に跳ね返された。(SASUKEより)
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約束の日――sentimental Ver.
倒産する出版社に就職する方法・第9回
約束の日。
まだ4月だというのに日中30度近くまで上昇した気温がその勢いを翳らしはじめたころ、俺は家を出る。
もう後戻りはしない。振り返るな。泥道に足跡など残っちゃいない。
俺は俺に言い聞かせる。
「今日、決める」