タグ: 倒産する出版社に就職する方法
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アスペクト比
倒産する出版社に就職する方法・第79回
企画は定まった。Facebookに投稿されているEARTHおじさんを主人公とした10コマ漫画を一冊の本にまとめる。これで行くのだ。俺もそう思っててん。楽しんで読んでもらいながら、「自分たちの暮らし方」のこと、「お金」のこと、「環境」のことを考えなおすような作品。これだ!
この案を長澤氏に報告する。
「えっ、マジ? マジなの? マジで?」
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自動音声応答システム
倒産する出版社に就職する方法・第78回
長澤氏からの「漫画家になります」宣言から数日後、私はようやく藤原ひろのぶ氏を東京都内の喫茶店で捕らえていた。相変わらず全国各地を飛び回っているため、この機会を逃せば、次に会えるのはいつになるかわからない。『買いものは投票なんだ』の続編企画である「EARTHおじさんとお金の話」(仮)の進捗と、勝手にFacebookに投稿されだしたEARTHおじさんマンガについて確認をしておかねばならない。またすぐ次の予定が控えているという藤原氏。悠長に世間話などしている暇はない。席に着くや早々に切り出す。
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腐ったミカン
倒産する出版社に就職する方法・第77回
『やっぱ、この色。。。いや』
このメッセージがLINEに送られてきたとき、俺は思った。
「ああ、そうか……」
落胆などしていなかった。むしろ心のどこかでほっとしていた。隠し続けてきた年齢詐称が露見したアイドルのように。ゴーストライターが明るみに出た佐村河内のように。これでよかったんだ。俺は自分にそう言い聞かせた。
時はその1週間前にさかのぼる。
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もうひとつの世界
倒産する出版社に就職する方法・第76回
「本日、緊急事態宣言を発出します。国民の命と生活を守るための決断です」
2020年4月7日、総理大臣は7都府県に緊急事態宣言を発出し、不要不急の外出自粛を強く求めた。緊急事態宣言を求める強力な世論が政治を押し切ったのだった。
女性キャスターは視聴者に呼びかけた。
「その命を奪ったのは私たちかもしれない。どうか他人事ではなく、大切な命を守るんだ。『自粛させられる』ではなく、すすんで自粛してください」
今、日本全国で日々10名もの尊い人命が失われ続け、また1日1200名もの人が負傷している。
この問題が厄介なのは、自分が被害者になるばかりではなく、加害者になるかもしれないということなのだ。
STOP交通事故!
「自分だけではなく、愛する人の命を守るため、不要不急の外出は避け、家にいよう」
ボクはテレビを観ながら、そう心に誓った。
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SAIKAI
倒産する出版社に就職する方法・第75回
この連載、やめたと思ったでしょ?
最終更新が1月22日で、そこから早3カ月。
それまでずっと1~2週間に一度ずつ更新してきたのが、3カ月更新されなかったら、ふつうもう二度と更新されないよね。商店街の和菓子屋のシャッター、3カ月閉まってたらもう潰れたと判断するよね。
ね、みんなも、もう二度と更新されないと思ったでしょ?
じつは俺自身がそう思った。
いや、俺だって初めの1週間くらいは「早めに次、更新しないとな」と思ったよ。
2週間くらいで「そろそろマズイ。早く次、書かないと」と焦った。
3週間で「もう3週間経ったか…。どうしよう」と迷った。
今思い返せば、ここが山だったな、うん。
山を通し越したら、もうなんでもなくなった。マズイマズイと思っていた罪悪感がなくなった。田代まさしもそういうもんだって言ってた。
だって俺忙しいし。新刊は2カ月に一度のペースで出しているわけだし、そこそこ売れている本もあるわけだし、連載書かなくてもいいじゃん、と。
自分で自分に聞いてみた。
そしたら、もう一人の俺がこう言ったんだ。
「そやな」
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キューブが落ちてくる
倒産する出版社に就職する方法・第74回
風邪もインフルエンザも寝れば治る。私はそう信じている。
なぜなら、私はこれまでそうして風邪やインフルエンザを乗り越えてきた。
どうしようもなくつらければ、ひたすら寝ればいい。眠れば解決する。だから、私は眠った。
翌10日、布団の中で震えながら目を覚ます。歯と歯がぶつかりガチガチと音を立てる。異常な寒さだ。戦慄悪寒というらしい。
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インフルエンザウイルスから逃げ切るスピード
倒産する出版社に就職する方法・第73回
2019年12月9日夕刻、私は阿佐ヶ谷の路上を小走りに駅へと急いでいた。背筋から全身へと広がる悪寒を感じながら、一刻も早く暖かな駅に駆け込もうとしたのだ。しかし、一歩一歩刻むたびに、悪寒も少しずつひどさを増しているような気がしてならない。
「やっぱり来たか……。やっぱり来たか……」
私は南阿佐ヶ谷駅の地下鉄へと続く階段を、そうつぶやきながら駆け足でくだった。
すでに終わりが始まっていた。
いや、始まりが終わろうとしていたのか。
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メビウスの輪
倒産する出版社に就職する方法・第72回
「1章ぜんぶ書き直す」って、この期に及んで何を言っちゃってるんでしょうか。
自動販売機に百円玉入れれば缶ジュースが出てくるように、印刷所に原稿渡せばゲラが出てくるわけではないのです。
ゲラにする際には、元の原稿に「誤脱字の修正」「用字用語の統一」「数字表記の統一」「事実関係の確認」などを行なったうえで、「文字の大きさ」「書体」などの指定書を作成し、印刷所に組版指定を行なうのです。それをもとに印刷所が組版を行ない「ゲラ」を出します。
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なんかちゃうねん
倒産する出版社に就職する方法・第71回
さあ、カバーに使う写真は決まりました。
デザイナーに電話し、使用する写真とおおまかなデザインのイメージを伝えます。写真を確認したデザイナーからの「はぁ…」というため息は聞かなかったことにし、これでカバーはラフがあがってくるのを待つのみとなりました。
さて、続く課題は本文です。こちらもまだまだ課題は多いのです。
9月初旬のこの段階で、私と著者・藤原ひろのぶ氏の手元には『ぼくらの地球の治し方』の再校ゲラがあります。
ゲラとは、印刷物と同じレイアウトで組まれた試し刷りのことで、1回目のゲラを「初校ゲラ」、2回目のゲラを「再校ゲラ」、3回目を「三校」、4回目を「四校」(以下略)……と呼びます。
ゲラごとに著者と編集者、場合によっては校正・校閲者などがチェックをして、修正を入れ、印刷所に戻して、新しいゲラを出し、再びチェック……という手順を経ます。
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酸欠とカバーデザイン
倒産する出版社に就職する方法・第70回
「酸欠やねん」
2019年9月初旬、都内喫茶店。
10月初旬刊行で進行中の藤原ひろのぶ氏の新刊『ぼくらの地球の治し方』の編集作業は佳境を迎えていました。タイトルは正式に決定し、続くはカバーデザインです。
カバーデザインはタイトルとともに本の顔ともいえる部分。内容を表現しつつ、書店店頭やネット書店でも一目でアピールできる存在感も重要になります。
写真か、イラストか、はたまた文字だけで表現するか、さらには使う用紙やその色合い、加工はどうするかまで、まさに編集者の手腕が問われるテーマなのです。