書籍案内

奇跡の杉
「金のなる木」を作った男


船瀬 俊介 [著]

四六判並製/224ページ/本体価格1,400円
ISBN 978-4-88320-455-7

日本の林業界に激震が走る“大発明”

 日本の林業が衰退した大きな原因のひとつに「木材乾燥」があります。日本の人工林のうち44%は「杉」。しかし、この日本でもっとも多く植えられている杉は非常に乾燥しにくい木として、業界では使いものにならない"山の草"と揶揄されてきました。この杉をうまく乾燥できるかどうかが、日本の林業界の前に立ちはだかる大きな壁なのです。
 現在の木材乾燥の主流は、100℃を超える高温蒸気乾燥。乾燥はするものの、杉が本来持っている色、艶、粘り強度や芳香成分、防虫成分、精油などの生命エキスをすべて"嘔吐"してしまい、残るのは強度も光沢も失った"死んだ木材"。切ってみると中がスカスカ、ボロボロ。木材として利用できないのは、素人の目でもすぐにわかります。
 ところが、業界の"常識"だった100℃を「45℃」で、しかも木を生かしたままで乾燥させた、素人がいるのです。

偉大なる発明のヒントは「魔法の温度」

 その人の名は伊藤好則。彼が開発した木材乾燥機「愛工房」がある研究所は、あの杉が今まで重宝されてきたヒノキを超える魅力をもった木材になったという噂を聞いて全国から駆けつけた人たちでにぎわっています。
 伊藤さんが45℃にしたのは、「木は板になっても生きている。自然界に存在しない高温では、木がかわいそう」だから。そんな伊藤さんの「木の気持ちになる」思想がこの大発明につながりました。
 この発明は、林業復活、資源大国化、地域活性化、雇用創出、そして鳩山新政権が掲げた温室効果ガス25%削減などなど、日本が抱えるあらゆる課題を一挙に解決できる可能性を秘めており、政財界の注目が集まっています。
 いつの世も偉大な変革をなすのは偉大なアマチュアである――それを体現した伊藤さんの開発までの知恵と、杉から広がる日本の明るい未来像を追った、環境派ノンフィクションです。

著者紹介

船瀬俊介(ふなせ・しゅんすけ)
 1950年、福岡県田川市生まれ。早稲田大学文学部社会学科卒業。食品・健康・環境問題に取り組むジャーナリスト。電磁波問題、狂牛病問題などについて、発覚前から警鐘を鳴らしていたのは有名な話。先見の明には定評がある。本書では、小さな町工場の一人の男が生み出した発明に注目。国産杉の活用を通して、日本の林業界、産業界の未来像を描いた。